うさぎ専用ページ
うさぎについての情報は、今だにわかっていないことや一部誤りもあり、飼い主様はその様々な情報に右往左往されていることでしょう。また、長年良かれと思って真逆のことをなさっている事例にも遭遇します。このページでは、皆様の愛兎のための正しい情報を提供し、少しでもお力になれればと言う思いで日々アップデートしてまいります。
うさぎの正しい飼い方・食事
現在飼育されているうさぎには長い歴史があり、もともとはアナウサギという重歯目(げっ歯類ではありませんよ)を家畜化したことから始まり、現在のような可愛らしい小さな品種に至ってます。さて、うさぎたちは元来どんな生活をしていたのでしょうか。
彼らは草食動物で、その中でもかなり弱い立場の動物でした。そのため襲ってくる天敵から逃げるためならどんなリスクも惜しみません。抑えられると自分の足が折れてでもジャンプするのはその名残です。彼らはシカのような大きな草食動物よりも弱い立場であったため、夜に活動するようになりました。もう美味しい新芽や花は全部食べられています。仕方がないので硬い草や、その根っこをバリバリすりつぶしてエネルギーに変える不滅の(=ずっと伸びてくる)歯と、強力な発酵タンク(=盲腸)を進化させました。たまに見つけたタンポポの花はご馳走です。貴重なタンパク源は盲腸の一箇所にためておいて、安全な夜にお尻から再度口に運びます(盲腸便)。うさぎの体はずっと生えてくる歯を適度に磨耗し、大量の繊維を発酵させることを大前提に作られているのです。
「アナウサギ」の名前の由来はその習性にあります。彼らは土の上を走り回り、穴を掘るのです。犬や猫と違って肉球はありません。骨と皮だけの足の裏には毛がびっしり生えていて、これがクッションになっているのです。長年フローリングの上で生活すれば当然毛は消耗され、足の毛はズリむけてしまうでしょう。穴を掘っているうちに爪はちょうど良い長さに削れます。これがなされないと爪はたちまち伸びてしまい、爪が折れるなどの事故の要因となります。
こんな彼らはずっとお目目まん丸の顔をしていますが、実はかなり感情を行動や態度にだす動物であることは皆様もご存知の通りです。
何かいつもと違うという飼い主様の直感はだいたい当たりです。
(1)環境
うさぎの飼育環境の適温は高くても25℃まで、湿度は50%がベストです。暑い方がずっと弱いので、夏季の冷房は必須です。毛が密に生えているので、窓を開けている、扇風機をかけている、はほぼ無意味です。
寂しくて死んでしまう。と言うのは当然迷信ですが、ストレスには弱いので静かな環境にケージを設置してあげてください。
また、よくずっと部屋の中に出したままにしています。と言うお話を伺いますが、実はあまりよくありません。単純に電気コードや誤食の危険性もありますが、足を保護するためには休足マットを敷いてあるケージの中で過ごすのが原則になります。どうしても人間の部屋はフローリング、カーペット、畳といったうさぎの足に悪い環境になってしまいます。足の裏を痛めて、俗に言う”ソアホック”にならないよう外で遊ぶのは1時間くらいにとどめておくのが無難です。「うさんぽ」は本当に危険ですからおやめください。
(2)食事内容
・チモシーの一番刈りを一日中食べさせ、
・ペレットは体重の1%
・果物などの甘いおやつは一切なし が正解です。
うさぎの元来の生活の仕方からして、高タンパク、低繊維の食事は体に不具合をきたします。キャベツとニンジンを主食として食べると言うイメージは、現実からはかなりかけ離れており必ず病気の原因になります。
また、「腸の環境を整える乳酸菌」「毛玉を溶かしてくれるパパイヤのドライフルーツ」「毛玉を排出させる潤滑油」はいずれも科学的根拠のないサプリであり、使用には注意が必要です。さらに、硬いものを噛ませて歯の健康を整えると言う製品も大問題で、あくまでも臼のようにすりつぶす(磨耗)ことがうさぎの歯の働きなのであって、バキバキ噛み砕くのは絶対にNGです。
とにかく繊維をどんどん食べて、大粒のウンチをたくさんするのが一番大事です。
(3)避妊・去勢手術
4歳以上の女の子の50%以上が子宮ガンであると言うショッキングなデータがあります。
だいぶ前から犬猫の避妊手術が常識的になっていますが、うさぎこそ避妊手術をしなくてはいけない動物なのです。それでも一般化していない理由、それは
1.このことが周知されていない
2.うさぎの麻酔を安全に行える施設が極めて限られている からです。
一方で去勢手術は医学的にそこまで必要性は高くなく、一部の病気の場合(精巣腫瘍)、おしっこを撒き散らすのがひどい場合は推奨されます。
うさぎの手術といえば「命がけ」と言うイメージがありますが、数年前からうさぎ用の喉頭チューブが開発され、これを挿管する技術さえあれば麻酔はかなり安全になってきました。
(4)うさドック
うさぎにも当然、血液検査、レントゲン検査、エコー検査が有効です。
4、5歳くらいをめどに1年ごとのペットドックを受けておいたほうが良いと思います。これは犬猫と一緒で、病気は症状が出てからでは治療成績が格段に悪くなるからです。
▶︎うさドック
うさぎの診察
うさぎは繊細な動物です。当然犬猫とは全く別の動物で、扱いから設備、病気まで全部違います。
弱い立場の草食動物ですから待合室、診察室、入院室も当然他と分けることが推奨されます。
(1)来院する際は、
うさぎを病院に連れて行くときおそらく多くの飼い主様が苦労されているでしょう。暴れてキャリーに入らない、病院ではビクビク怖がっている、家についたらプンプン怒っている。
まずキャリーは右の写真のような、プラスチック製の形がしっかりしたもので、上が完全に開くような構造のものが好ましいです。しっかりとした形状のまま運べ、うさぎを出すときも、無理やり引っ張り出す必要がなくなります。そして、できればこのキャリーをブランケットで隠すようにして待合室でお待ちください。新しい場所、知らない人は怖くてたまらないのです。
うさぎさんの飼い主さまは、当院の場合入って左の専用待合室と診察室をお使いください。
(2)爪切り
うさぎの爪切りはよく行う処置です。
多少抵抗するのが普通ですが、決して押さえつけたり、洗濯ネットに入れたりしてはいけません。また動くものなので、術者が保定から爪切りまで全てを一人でさせていただいています。
(3)触診
うさぎを優しく扱うと全身くまなく触らせてくれます。「暴れる子です」とご心配なさる飼い主さんもいらっしゃいますが、ほとんどの場合十分に触診に耐えます。
胃と盲腸は十分に触り分けることが可能で、そのボリュームや性状を評価できます。慣れると子宮を触ることも十分に可能で、ゴツゴツと違和感があった場合の多くが子宮ガンです。触るだけで得られる情報量はかなり多いです。
(4)歯の観察、処置
うさぎにとても多い病気「不正咬合」には本当に多く遭遇します。ずっと治らない食滞でセカンドオピニオンでいらした際に見つかる病気第1位です。
前歯は比較的簡単に見えますが、奥歯はなかなか見ることができません。これを検査するたびに麻酔をかけているようでは、うさぎには負担になります。ましてや、不正咬合であれば2週間から最長でも3ヶ月に1回は臼歯を切らなくてはいけません。このたびに一生麻酔をかけることは少し非現実的です(ごく一部の子は軽い鎮静が必要になる場合があります)。
これらの処置は無麻酔で行なうべきです。簡単な保定で数分で終わります。当院では飼い主さまに一緒に見ていただくようにしています。
うさぎの病気
はじめに;誤解されていることの多い疾患(エンセファリトゾーン、スナッフル、毛球症)
▶︎鬱滞(過去に言う”毛球症”)
▶︎子宮がん
▶︎乳腺腫瘍、過形成過
▶︎根尖膿瘍
▶︎不正咬合
▶︎精巣腫瘍
▶︎停留精巣(陰睾)
▶︎臍ヘルニア
▶︎骨折
▶︎膀胱結石
▶︎疥癬
▶︎皮膚腫瘍
・毛芽腫
・軟部組織肉腫
・眼瞼の皮脂腺腫
・悪性黒色腫(メラノーマ)
・毛包漏斗部嚢胞
・脂肪腫(厳密には皮下の腫瘍ですが、)
・扁平上皮癌