うさぎの食滞(過去に言う"毛球症")

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うさぎの食滞(過去に言う”毛球症”)

「うさぎが食べないのは危険。」
「下痢をしたり、毛玉で数珠つなぎになった便が出てくる。」
「痛がってうずくまる。」「歯ぎしりをする。」
「毛玉が詰まることが原因なので、換毛期にはブラッシングをしっかり」「パパイヤの酵素がいいらしい。」
いろんな情報が交錯していますが、実際はどうなのでしょう?

数珠つなぎになった便
決して毛球症ではない

1)「毛球症」と言う病気について
うさぎが食べない病気=「毛球症」と思われがちですが、「毛球症」の定義は、換毛期などに、自らの体毛を大量に摂取することよって胃腸の動きが止まることです。確かに換毛期に食滞になることはありますし、その時の便は右の写真のように毛で便が数珠つなぎになっていることがありますから、昔は「毛球症」と信じられてきました。
しかし実際にはうさぎの腸はかなりキャパシティーが高く、自分の体毛はおろかダンボールを食べても何の問題もなく排泄できます。うさぎはもともと自分の毛を摂取していますが、牧草の繊維の中に紛れて出てくるため、コロコロの便にカプセルされて目につきません。つまり「毛球が詰まる→食べない」のではなく、「食べない便が減る毛が目立つようになる」と言うだけのことなのです。
このような背景を受け、現在では「毛球症」と言う表現は用いず、「うさぎの消化器機能低下症候群RGS)」とか、単純に「食滞」や「消化管うっ滞」と表現しています。換毛期に食滞が起きるのは、単純に季節の変わり目で胃腸炎が起きたというだけです。

うずくまって食べない、飲まないという主訴が多い

2)食滞の症状・メカニズム
食べない 水を飲まない
お腹が張っている
お腹が痛そうにうずくまる
腹鳴
歯ぎしりをする
便が出ない ゆるい 毛で数珠つなぎになっている
といった症状が認められます。

食滞は気温などの外的ストレスや基礎疾患が原因となり発症します。ここまでは我々の胃腸炎と大差ありません。しかし、草食動物のうさぎが繊維を食べなくなり盲腸の動きがストップすることは大問題です。本来はひっきりなしに入ってくる繊維を発酵するため、うさぎは盲腸内にたくさんの善玉菌を飼っています。この善玉菌たちは繊維を発酵する過程でエネルギー源を得ているため、うさぎが牧草を食べるのをやめてしまうと次々に死滅してゆきます。すると盲腸内の細菌のバランスが崩れ、ガス産生菌などの悪玉菌が増えてしまいます。このガスが、胃拡張を引き起こすためお腹は張り、うさぎはその痛みのあまりうずくまって歯ぎしりをすることもあります。ガスが腸管内を移動する際に腹鳴が聞こえることもあります。繊維の割合が極端に減った盲腸内ではいつものコロコロ便が作れなくなってしまうため、盲腸便が食べきれないほど作られてしまい、まるで下痢をしたようになります。これは厳密には下痢便ではないのですが、重度の食滞を起こすと本当に下痢を起こすことがあります。これはかなり匂いがきつく、全く見た目が違います(真の下痢)。そして「真の下痢」の場合、うさぎの一般状態はかなり悪く、危険な状態なはずです。上で述べたように便の量が減るため数珠つなぎになって出てくることもあります。
うさぎの食滞は命に関わるとよく言いますが、それはいかにうさぎが盲腸という発酵タンクに依存して生きているかを物語っています。うさぎの腹部の大部分を占める盲腸の内部環境が変わることはそのまま、血液のph、酸素分圧に直結します。そして「食滞→腹痛→食滞の悪化」という悪循環がこの問題をより大きくさせてさせてしまいます。処置が遅れると命に関わるのは事実です。調子が悪くなったら、次の日までには病院にかかる必要性があります。

3)治療
以前は毛玉そのものが悪いと思われていましたから、毛玉を溶かすと噂されているパパイヤやパイナップルを食べさせたり、毛を流し出す滑らかなペーストの薬が流行った時期がありました。しかし、これらの治療法の効果を支持する文献は一切ありません。
正しい治療法は、胃腸運動改善薬を用いたり、疼痛管理をすること、点滴で循環を確保することです。重症の場合は入院が必要な場合もあり、この時院内で強制給餌を行うこともありますが、これは相当重症な場合のみに限ります。強制給餌はうさぎに多大なストレスを与える恐れがあります。また、盲腸内の細菌バランスを整えるために乳酸菌が用いられることもありましたが、効果のほどは証明されていません。
繰り返す食滞の場合、一番重要なのは普段の食事内容の見直しをすることです。普段から繊維をたくさん食べ発達した盲腸を持つうさぎは食滞になりにくいです。そして基礎疾患の探索も忘れてはいけません。よく遭遇するのはメスの子宮ガンや不正咬合が原因となって食滞を繰り返す場合です。

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 腫瘍科認定医 瀧口 晴嵩