うさぎの子宮ガン<避妊手術の必要性>

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うさぎの子宮ガン<避妊手術の必要性>

うさぎの子宮は左右に完全に分かれる
(重複子宮)

4歳以上のうさぎさんの半数以上が子宮ガンである。
そんなショッキングな報告が最近なされました。
以前からうさぎに子宮ガンが多いことは体感として感じていましたが、ついに正式な論文が出ました。
そしてその報告は「未避妊メスの9割は子宮ガンが原因で亡くなる」と続きます。

犬や猫では子宮の腫瘍はそんなにポピュラーではなく、子宮蓄膿症や乳がんの方がずっとメインの病気です。
一方でうさぎでは乳腺腫瘍はそこまで多くなく、子宮蓄膿症はほぼ発生しません。
また、犬猫の場合子宮の腫瘍には「腺癌」「未分化肉腫」「線維肉腫」など様々なタイプがあるのに対し、うさぎはほぼ全て子宮腺癌という悪性の腫瘍です
ですが、朗報もあって早期に摘出できれば転移は少ない傾向にあります。

そもそも子宮の病気ですから、子宮卵巣摘出術をすればいいのですが、
①この事実がまだまだ啓蒙されていない
②知っていても、うさぎの手術を日常的に安全に行える施設が極めて限られている
という事情のため、いまだに犬や猫の避妊手術の普及率に足元にも及ばないという残念な事実があります。

とにもかくも早期の避妊手術が重要で、6ヶ月齢から1歳の間がもっとも手術に向いている期間です
(6歳、7歳でも遠方からたくさんの患者さんがいらしています。やはり子宮ガンが見つかることが多いですが、がんから逃げきれているうさぎさんはたくさんいますので、諦めないでください。)

症状としては元気食欲低下と血尿です。血尿が出る頃にはかなり末期で、我々としては、その前の食滞の時に検出する責任があります。

珍しいですが、人間で多い「子宮筋腫」に遭遇することもあります。
また、触診で子宮がボコボコすると思い、手術をしてみると「子宮内膜症」であることもよくあります。これはいずれ子宮ガンに移行することが示唆されており、内膜症のうさぎは食滞を起こしやすく、乳腺癌や乳腺過形成の原因として一般的ですから、これも外科適応です。

腹水による重度の腹囲膨満
左下に乳腺腫瘍も認められる

<腹腔内転移により腹水が大量に溜まった一例>

9歳の未避妊メス
他院にて1年間毛玉症と診断され、強制給餌と内服を続けてきた

いらした時には全身状態はかなり悪く筋肉量の低下、腹囲膨満(お腹が張っている)、乳腺腫瘤が確認されました。
血液検査上は軽度の腎不全
レントゲン上では問題なく
超音波検査で大量の腹水貯留、子宮の形状の不整、強い腹膜炎が検出されました。

一度一般状態を上げるため内服の調整をし、手術による摘出をしました。

抜去された腹水は1Lにも及び、腹腔内への転移は脾臓、胃、腹膜、後腹膜、肝臓、膀胱と、全域にわたっていました
子宮の病理の結果もやはり子宮腺癌でした。かなり色も悪く、表面が脆弱で、出血している様子が確認されます。
子この症例は乳腺癌も併発していました。

この症例は癌性腹膜炎の管理を行い、久しぶりに元気に食べられるようになりましたが、できれば子宮癌自体になってほしくないものです。


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 腫瘍科認定医 瀧口 晴嵩