停留精巣(陰睾)
<卵巣は体の中にあるのに、なぜ精巣は体外にあるのか?>
女の子の卵巣はお腹の中にあり、排卵することで赤ちゃんを作ることができます。一方男の子の精巣は陰嚢(袋)の中にあります。しかし実は、胎児の頃はオスもメスも生殖腺(精巣や卵巣)はお腹の中、厳密には腎臓のすぐ近くにあるのです。どうして性別によってこのような差ができるのでしょう?
それは精子の性質に起因します。精巣内では常に細胞増殖が盛んに行われており、精子が作られています。その際、体温のような高温に晒されると異常な細胞分裂が起きやすくなってしまいます。そのため、わざわざ陰嚢という体外の空間を作り、そこで精巣を冷やすようになっているのです。
これを実現するため、精巣は生まれた後、腎臓をスタートし、陰嚢に向かって移動してゆきます。だいたい3ヶ月以内には陰嚢に精巣が降りてきます。
<停留精巣(陰睾)>
3ヶ月経っても精巣が陰嚢内に降りてきていない状態を停留精巣(陰睾)と呼びます。これには2種類あり、そもそもお腹の中から出てこれていない陰睾(腹腔内陰睾)と、お腹からは出られたが皮膚の途中で止まってしまった陰睾(皮下陰睾)です。
先ほど説明しましたように、高温に晒された精巣は異常な細胞分裂が起きやすくなります。そのためある文献には精巣腫瘍の発生率が、正常な子の7倍高いことが示されています。停留精巣の子の場合、早急に精巣摘出を行う必要があります。
<手術の様子>
この症例は、右が腹腔内陰睾、左が皮下陰睾でした。2箇所皮膚切開をする必要があります。
停留精巣の場合、摘出した精巣は小さく発育が悪いことがほとんどで、すでに異常をきたしている様子が伺えます。