6ヶ月の柴犬の女の子
避妊手術の術前検査としてした心臓の超音波検査で問題が見つかりました。
生まれつきの心臓の病気が2つあったのです。
1つ目は
「肺動脈(弁)狭窄症」
です。
チワワなどが好発犬種ですが、どんなワンちゃんでもありえます。
心臓の右心室から肺に向かって走る肺動脈には弁があります。
この弁(肺動脈)がうまく空いていない状態で生まれてくるとこの病気になります。
重症度はこの穴の狭さで大きく異なり、
若いうちにこの病気が原因で亡くなってしまう子
歳を取って心不全になり、実は肺動脈狭窄症があったことがわかる子(←本来はあってはならないことですね)
特に症状も示さずに歳になってから偶発的に発見され、生涯にわたって問題を起こさない子
といろいろです。
この子は今のうちは比較的圧格差(弁の前と後ろでの血圧の差)が小さいのでまだ治療対象ではないですが、経過観察が必須です。
起きていることは、
肺に血流を送れない→換気能の低下
右心への血液のうっ滞→心臓が大きくなる
といった感じです。
治療方法は諸説ありますが、主に、
①血圧を下げるお薬(アテノロールなど)で内科的に管理する
②カテーテルを使って心臓内にバルーンを挿入し、膨らませ、狭いところを広げる
です。
②の外科的な方法は合併症がそれなりの確率で発症するのと、
①と②で予後が変わらないという報告があるので、①の内科的な方法がよく用いられます。
ですが、もしかしたら重症度によってどっちが良いかは違うのかもしれませんね。
今後の研究と論文報告に期待しております。
この子も定期的に、
右心の肥大の有無
弁後部拡張の有無
圧格差
などをモニターしていき、治療対象になれば対策を取らなければいけません。
そしてもう一つ
「心室中隔欠損症」
です。
これは国内だと柴犬がとても多いことが知られています。
左心室と右心室の間のしきり(中隔)が空いてしまう病気です。
正確には生まれるまでの間に閉まらなかった。ということです。
心室中隔欠損症にもいくつかタイプがあるのですが、犬の場合一番多いのが、
絵に書いてあるように真ん中ではなく、一番上(絵だと右)の最後のところがくっつかないパターンが多いです。
これも穴の大きさによって予後が大きく異なりますが、
さっきの肺動脈狭窄症とは反対で、圧格差が低いほど予後が悪いです。
この子の場合穴がとても狭く、圧格差がとても高かったので(制限性VSD)、治療対象にはなりません。
治療法としては、
①カテーテルで穴を埋める(小児科用のASDアンプラツァーをはめる)
②内科的に血行動態の管理
ですが、治療対象であるなら基本的に手術が基本です。
これも経過観察ですね。
どんな病気も
早く見つかって、
定期検診をして、
正しいタイミングで正しい治療をすれば、
最良の結果が得られます。
この子の心臓は私が守り抜きます!!
八千代市、船橋市の動物病院
はる動物病院
千葉県八千代市緑が丘西
1−15−2
047-406-5008
腫瘍科認定医 瀧口 晴嵩