IBD(炎症性腸疾患)- タンパク喪失性腸症

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IBD(炎症性腸疾患)- タンパク喪失性腸症

T.プードル
避妊メス
9歳

定期検診で低アルブミン血症を発見
最近になって下がってきて、下痢もするようになってきた
食欲ok
嘔吐なし

定期検診していなかったらぱっと見、元気な可愛い普通のトイプーちゃんです。

しかし、各種検査の結果大きな病気が隠れていることがわかりました。

タンパク喪失(漏出)性腸症です。

超音波で腸粘膜を観察してみると、
Striation(俗にいうゼブラパターン)
Speckle(俗にいうホワイトスポット)
といった特徴的な所見が読み取れます。

内視鏡です。

胃の中に石が入っていました笑

取っておきましょう。

さて、本題です。

胃の小湾
胃体部

幽門

少し荒れています。

組織を小さい鉗子で採取してきます。

十二指腸です。

浮腫(ふやけ)と、
絨毛の不整
出血

ここからも組織を取ってきます。
何か病変があるに違いない。。

空腸上部です。

もっとひどい浮腫。。

白いポツポツが見えますね?

これがリンパ管に詰まった脂質です。
エコーでこれがStriastionの所見となって映し出されます。


病理の結果、
リンパ球形質細胞性腸炎(炎症性腸疾患の1分類です)
に伴う、
リンパ管拡張症

タンパク漏出性腸症

だとわかりました。

お薬の投薬と
低脂肪のご飯への切り替えが必要です。

無事アルブミンがぐんぐん上がり、下痢もなくなり、食欲も安定しました。

次の症例です。
Mix 中型犬 9歳 女の子
1年間下痢でセカンドオピニオンでいらしました。
色々な治療を試していましたが、どれも良くならなかったそうです。

各種検査をさせていただくと、
低アルブミン血症 と、
エコーで腸に異常が、、

Speckle です。

腸壁の肥厚(厚くなっている)もありました。

微量腹水も出ています。

他疾患を除外した上で、内視鏡に踏み切りました。

胃は綺麗。

十二指腸は、
出血と
浮腫
リンパ管拡張症

が認められました。

もう少し進んだ十二指腸。

ここもひどい。

空腸です。

やはり浮腫がひどい。

これはただの腸炎ではなさそうだな、と思います。

回腸上部です。
言わずもがな、ひどい浮腫と炎症です。

病理の結果は
「腸のリンパ腫(高悪性度型)」
でした。
この子は抗がん剤でないと良くなりません。


IBD(炎症性腸疾患)の怖さは、
その病態パターンの多さ、複雑さ、それに伴う誤認識  と
実感のない生命への危機です。

元気だけど、下痢をしていないけどアルブミンが低いということはざらにあります。
アルブミンが低いと言われてもピンときませんが、
放っておくと、腹水がたまったり、血栓が詰まって急死することがあります。
とても怖い病気です。

また、謎の嘔吐下痢を繰り返し
点滴や下痢止めで一時的によくなるけど、また繰り返すという場合この病気を考えなければいけません。

IBDという病名は比較的有名です。

しかし認識や定義がしっかりしないまま、名前だけが一人歩きしている感が否めません。
去年もたくさんこれに関する論文が出ました。
まさに今わかってきている病気という感じです。

IBD(炎症性腸疾患)
LPE(リンパ球形質細胞性腸炎)
腸リンパ腫
PLE(たんぱく漏出性腸症)
IL(リンパ管拡張症)

といった用語が定義と分類がグチャグチャにメディアに記載されているので混乱を招きます。

治療法も本当に病態によって様々で、

抗生剤で管理
食事だけで管理

ステロイド
免疫抑制剤
抗がん剤

低脂肪のご飯
低アレルギーのご飯

など適用と組み合わせはその症例によります。

この型別を見極めるには、内視鏡(胃カメラ)で生検をしなくてはいけません。


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 腫瘍科認定医 瀧口 晴嵩