急にぐったりし、嘔吐、下痢をしてしまったお年のダックスさん。
調べて見ると、
黄疸
肝臓の数値が高い
炎症の数値が高い
ことがわかりました。
超音波検査をして見ると、
肝臓周りを中心にお腹の中の脂肪(腸間膜)の白みが強いです。
炎症があるとこう見えることがあります。
つまり「腹膜炎」ですね。
さらにしらべてみると、
胆嚢がおかしい!
胆嚢壁の二重化、エコー源性の亢進
胆嚢内容物の粗造
肝臓との間にすきまがあるかも!?
胆嚢破裂を疑い始めます。
お腹の中のリンパ節も腫れていました(前腸間膜リンパ節)。
細い針で細胞を取って見ると、
ゴミを食べてくれるマクロファージという細胞の中に黒い点々が、、
きっと胆汁成分を貪食しているのだろう。。
そう判断します。
飼い主様へのお話をさせていただき、
胆嚢摘出を前提とする開腹手術をすることになりました。
すると、、
やはり破けていますね。。
ちなみに肝臓もボロボロです(これが元々の基礎疾患であると後にわかります)。
取って見ると内容物もグズグズで、
胆嚢壁もボロボロでした。
取った後は特殊なクリップで塞ぎます。
胆汁がぶちまけられているお腹を綺麗に洗って、終了です。
↑洗った後の廃液です。
胆嚢の中には胆汁という消化液が入っています。
消化酵素ですから当然、漏れてしまえば自分の体も溶かしてしまいます。
強い酸なので、化学的な炎症も起きます。
細菌が増殖しているケースが多いですから、細菌性の炎症も起きます。
強烈な炎症によって、
激しい腹膜炎が起き、急性の嘔吐を引き起こすのが典型例です。
胆汁成分が漏れ出し、それがお腹から吸収されるので黄疸が出ます。
放っておけば数日以内に死に至る恐ろしい病気です。
そもそも勝手に胆嚢が破れることはありません。
基本的には基礎疾患があるはずです。
胆嚢炎、胆管炎
胆石
胆汁成分の組成異常(胆嚢粘液嚢腫など)
さらにその裏に、
クッシング症候群
肝障害(腫瘍性、肝硬変、膵炎etc)
犬種特異的な特性
などなどさらに基礎疾患が隠れていることも多いです。
この病気の問題点の1つは、画像検査でわかりづらいことも多いということです。
破裂して、腹水がたくさんたまっていれば、
破裂している穴がたまたま見えやすければ、
診断は比較的容易なのです。
一方で、いずれも軽微な症例や初期の状態ではわかりづらく、
「疑わしいから手術」とせざるを得ない状況もあります。
すぐに対処しなければいけない病気ですからね。。
ある論文では、
実際に胆嚢破裂していた症例のうち、30-40%の症例がアメリカの専門医でも胆嚢の破裂している穴を検出できなかったと報告されています。
問題点の2つ目はその致死率の高さです。
手術しなければ基本的には助かりません。
手術もかなりリスクの高い部類に入ります。
大切なことは、破裂をするような病気がないかを定期検診しておくことです。
だいぶ動物についても定期検診の大切さが周知されてきましたが、
高齢の子は、1年毎では少し不安かもしれません。
また、血液検査だけでは心もとないです。
人間のようにCTというわけにはいきませんが、
せめて、
血液検査
胸部レントゲン
腹部超音波検査
をした方がいいのかもしれません。
八千代市、船橋市の動物病院
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腫瘍科認定医 瀧口 晴嵩