肛門のうアポクリン腺癌

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肛門のうアポクリン腺癌

シーズー
去勢オス
9才

お尻の横が腫れているという主訴でした。

いわゆる「肛門腺」。しぼるやつです。

正確には、「肛門腺」というものは存在せず、
肛門のう(アポクリン)腺 か、
肛門周囲腺

です。

絞ると中身がビュッと出てくるのが
肛門のう腺
ですね。

肛門周囲腺
はお尻の表面にあって、こすりつけることで匂い付けをするための臓器です。

この子が腫れているのは
肛門のう腺
です。

悪い腫瘍の名前が頭をよぎります。。

色々検査をし、手術適用なので手術に踏み切りました。

大変な手術です。
腫瘍が浸潤性が高いため、周囲組織との境はかなりわかりづらいです。
一方で、取り切ることを目標としなければいけません。
だけど、攻めすぎるとすぐ横に直腸が、、後ろ足へ行く神経が、、太い血管が、、お尻を閉める筋肉が、、
感染も心配なところです。。

やはり、奥深ーくまで腫瘍は入り込んでいて、がっちりくっついています。

なんとかしなければいけません。

丁寧に、かつできるだけ周囲の組織も取るイメージでゆっくり進めていきます。

思っていたよりさらに深い。。

なんとかここまで腫瘍の被膜を破ることなく、肛門のう腺の導管を分離できました。

肛門を締める筋肉(外肛門括約筋)も慎重に分離していきます。

丁寧に丁寧に、

ここまで来ると、太い血管や神経がすぐ横に!!

なんとか取りきりました!!

これを病理検査に出すと
やはり「肛門のう腺癌」

そして、「取り切れていそう」とのこと!!

感激です。。

取ったあとはこんなにぽっかり。

感染予防、腫瘍細胞の洗浄を目的に
綺麗に洗います。

綺麗に塞げました。

この後に特に便失禁もなく、元気にしています。

肛門のう(アポクリン)腺癌についてです。

一昔前はメスに多いと言われていましたが、
メスも去勢オスも発生率に差はないというのが最近の見解です。

極めて挙動が悪い、高悪性度の腫瘍です。

とても特徴的な腫瘍で、
①周囲への浸潤性が高い
②原発のしこりは小さいままに腰下リンパ節だけが巨大化するのが典型例
③その割に、肺転移は早期にはしていないことが多い
④腫瘍のせいで高カルシウム血症をともなうことが多く、その場合腎不全に陥る。
⑤動物を苦しめる要因は、高カルシウム血症と物理的な問題(うんちが出なくなるなど)なので、腫瘍が転移していても取り切れなくても手術の意味は十分にある。

この子の場合は、いい意味で非典型例でした。
術前の検査で、
①高カルシウム血症がなかった
②なんと腰下リンパ節を含め転移していなかった。
③直腸への癒着が軽度だった

ので現実的に完治が望める手術となりました。

とはいえ安心はできず、
これから定期検診が欠かせません。
早期に初動調査をしっかり詰めること、
この腫瘍のユニークポイントを知っておくこと
手術のテクニック
が必要です。

多くはない病気ですが、注意が必要です。


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 腫瘍科認定医 瀧口 晴嵩