うさぎの臍ヘルニア(小腸の吻合術)
「臍(おへそ)」はそもそもなぜあるのでしょうか?
哺乳類の赤ちゃんは母親のお腹の中にいる間、栄養をもらうために臍帯というパイプでつながっています。この臍帯は赤ちゃんの腹腔内までつながっているため、一時的におへそに穴が空いた状態でいます。まれにこの穴が閉じないことがあり、そこから腹腔内の脂肪や腸が飛び出てしまうことがあります。これを「臍ヘルニア」と呼びます。脂肪が出ているだけなら美容上の問題しかありませんが、臓器が出るとそれぞれの臓器に応じた症状が出ることになります。特に腸が飛び出た場合、嵌頓ヘルニアになり”首”の部分が締めつけられるため、血流が止まり壊死することになります。すると当然、腸の内容物が腹腔内でばら撒かれ腹膜炎となります。「臍ヘルニア」は緊急を要する状態に陥る可能性のある危険な病気なのです。うさぎにも「臍ヘルニア」は発生しますが、その頻度は犬より低いです。
<治療法>
治療のコンセプトは単純で、穴を閉じることです。
この際、ただ閉じるのではなく、両サイドの筋肉と筋肉を縫い合わせるようにする必要があります。縫い合わせる糸が溶けた後、また空いてしまうからです。
当院では筋肉の両サイドを薄く切った上で縫い合わせるようにしています。こうするとより強固に癒合してくれるのです。
<臍ヘルニアから脱腸を起こした一例>
1歳 ロップイヤー メス
昨日から急に食べなくなった
身体検査で腹部に腫瘤を認めました。
超音波検査をしたところ、腸が臍ヘルニア孔から逸脱し、穴に締め付けられ、うっ血していることがわかりました。
指で押して戻るようなレベルではなく、おそらく腸は壊死しているだろうと考え緊急手術となりました。
皮膚を切開してみると、やはり想定のような状況が確認されました。
壊死している腸をそのまま戻して閉腹しても解決になりませんから、壊死した腸を切除します。
そして腸の端と端を縫い合わせます(端端吻合)。
最後に腹腔内を洗浄し手術終了となります。
基本的にうさぎの消化管の手術は極めて難易度が高く、望ましいことではありません。
臍ヘルニアを見つけたら早めに手術して穴を閉じておくのが得策です。